君は刻の涙を見る。

機動戦士Zガンダム」の劇場版公開に際して、ヒロインのフォウ・ムラサメの声優さんが、音響監督の裁量でベテランの島津冴子から売り出し中のゆかなに変更された件について、その変更手続きに不透明な点があったとかで、ファンの間でもめているみたいです。
予測された事態ですが、案の定それぞれの声優ファン同士の罵り合いになり、彼方此方*1で祭りになっているのですが。
まぁ、私も未だにアニメは好きですし、世代的には「ヤマトの最若年」「ガンダム劇場三部作」に属するので、この罵り合いに至る彼らの心情は察するに余りあります。
なにより、およそその種の祭りというものが、後になってみればとても馬鹿馬鹿しいのですが、現在進行形である間はやめるにやめられないのです。


しかしこれを法律家を志している者の目から見ると、このファン同士の罵り合いというものは、およそ「当事者適格を欠いた者同志の雑音」とも思えます。
というのも、ココで問題になるとしたら

  1. 音響監督の委任契約*2債務不履行責任
  2. 音響監督の不法行為*3責任

であり、その相手側としては総監督あるいは興行主なのですから。
まぁ、声優さんが総監督あるいは興行主の請求権を代位行使してくることも考えられないでもないですが、あまり検討してもしかたない例とも思えます。


もっとも、ファンが「思い入れを傷つけられた」として、音響監督の不法行為責任追及を行えないかについては争いがありますが、音響監督の不法行為とファンの思い入れ損害との相当因果関係の証明責任はファン側にありますから、訴えも難しいかと。


結局、損害が大きいのは誰なのか。
利益を得たのは誰なのか。
正直傍から見ていてぜんぜん判らないです。
司法試験の論文問題からは想像がつかないほどに、民事は穢いものですね。

*1:一々リンクしません

*2:民643条以下

*3:民709条